29/0604 午後9時半 ジュンジュライ
もう6月だとはっとする
ひとりでいるとはっとするときがある
ひとりでいないとはっとしないことに
ひとりでいるとはっとするときがある
ひとり電車に乗っていると
わたし以外にも人間っているんだなと気づくときがある
みんなはどこから来たのだろう
どこへ行くのだろう
くだらないことでいっぱいになった
紙袋抱えて
わたしはどこへ行くのだろう
ただの帰り道、なんだけれどね
電車がガタンゴトン進んでゆくから
わたしの頭からはカランコロン
何かがこぼれ落ちてゆく
慣性の法則って知ってる?
メガネのお兄さんがわたしに尋ねる
転がってしまう前に掴んだのは
英語の授業
6月は雨が多い
蒸し暑くて肌寒い教室
先生が言う
「6月は」
「ジューン」
「7月は」
「ジュラーイ」
とりあえずまだ必要かもしれないから
紙袋にジュンジュライを放り込む
断捨離って知ってる?
隣のメガネがそろそろうるさいけれど
わたしは紙袋を
小汚い紙袋を抱えなおして
電車がガタンゴトン進んでゆくから
わたしの瞼は閉じてしまう
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ジュンジュライ
ジュンジュライ
カランコロン
掴み損ねたそれは6月の雨の匂い
それとも窓から見えた体育の授業
嗚呼、全て抱えてゆけたら!
耳鼻科へ行きました
耳鼻科に行った
耳が痛い
不安になって耳鼻科に行った
(こわいいやだいたいのこわい)
ベルトコンベアみたい
器具を付けたり外したり
よくわからない数値の前
(こわいいやだいたいのこわい)
「あなた方も人間ですもの人間は間違う生き物私は簡単には信じません。だからどうか優しくして」
(こわいいやだいたいのこわい)
気がつけば力強く言われるまま
意味がわからないのに安心する奇妙
待合室には老若男女
人間ってのはずいぶん
面白い生き方をしてるなぁ
優しくて穏やかで冷たい「お大事に」
に背中を押され
赤ちゃんの泣き声を背に外へ
青い空白い雲
耳は痛い
生きてるってなんだろう
でも今日は天気がいいなぁ
歩いて帰ろう
簡単で単純な土曜日の朝
私は耳鼻科に行った
29/5/16 22時半過ぎ 暗闇の中の社会
もうやだまた怒られた私が悪い悪くないわかってほしいほっといてほしいなんでどうしてだってでも。もういい疲れた早く寝ようって電気を消して布団にもぐりこんで、自分の不幸に酔って泣いて。眠りに落ちるその瞬間に、でも待って明日履くストッキングがない!洗濯のために野良猫のように飛び起きるの。そして自動乾燥のスイッチを入れて満足していそいそと丸まって眠る。暗闇の中で社会人は強かな猫になるの。
290421 19時半 帰りの電車
別に何がどう、ということもない
1日だった
普通に働いて
普通にミスをして
普通にへこんだ
1日だった
もらった
瓦煎餅1枚を
噛み砕き、飲み込み、帰る道すがら
涙ごと飲み込もう、なんて
目は乾きすぎて痛いくらいで
涙なんか出やしない
別に何がどう、ということもない
1日だった
29/0421 午後2時前、公園にて。
生まれてきたからには
やはり、誰もが羨む
ラグジュアリーで
ソフィスティケートで
ハイソサエティでセレブリティな
そんな生活を送りたい。
誰よりも美しく
誰よりも優しくありたい。
誰からも愛されたい。
誰よりも愛されたい。
誰よりも幸せになりたい。
けれど今、おにぎりを食べながら
(それはあまりに過ごしやすく
麗らかな午後だった)
このまま溶けてなくなりたいなぁと思う。
このまま誰にも気づかれず
静かに消えてしまいたいなぁと思う。
それはとても孤独で、
でも限りなく幸福に近い感情。
原チャを降りた若者2人が
何も話さずに缶コーヒーを飲んでいる
市のマークのジャンパーを着た
おじさんたちが葉桜を整えている
それはあまりに過ごしやすい
麗らかな午後だった。
そして私は深呼吸、
さて、後半戦です。戻ろっと。