29/0604 午後9時半 ジュンジュライ
もう6月だとはっとする
ひとりでいるとはっとするときがある
ひとりでいないとはっとしないことに
ひとりでいるとはっとするときがある
ひとり電車に乗っていると
わたし以外にも人間っているんだなと気づくときがある
みんなはどこから来たのだろう
どこへ行くのだろう
くだらないことでいっぱいになった
紙袋抱えて
わたしはどこへ行くのだろう
ただの帰り道、なんだけれどね
電車がガタンゴトン進んでゆくから
わたしの頭からはカランコロン
何かがこぼれ落ちてゆく
慣性の法則って知ってる?
メガネのお兄さんがわたしに尋ねる
転がってしまう前に掴んだのは
英語の授業
6月は雨が多い
蒸し暑くて肌寒い教室
先生が言う
「6月は」
「ジューン」
「7月は」
「ジュラーイ」
とりあえずまだ必要かもしれないから
紙袋にジュンジュライを放り込む
断捨離って知ってる?
隣のメガネがそろそろうるさいけれど
わたしは紙袋を
小汚い紙袋を抱えなおして
電車がガタンゴトン進んでゆくから
わたしの瞼は閉じてしまう
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ジュンジュライ
ジュンジュライ
カランコロン
掴み損ねたそれは6月の雨の匂い
それとも窓から見えた体育の授業
嗚呼、全て抱えてゆけたら!